アクリルブロックみたいなキーボード、「Fold(仮)」を作った
この記事は「キーボード #2 Advent Calendar 2019」9日目の記事としてお送りします。
アクリルブロックみたいなキーボード、「Fold(仮)」を作ったので、思いついてから出来上がるまでの流れを書こうと思います。
- ※アクリルブロック
- 厚みのあるアクリルに図柄をプリントしたもので、他の面へ屈折が映える物体です。
- Google 「アクリルブロック」画像検索結果
要件
- 厚めのアクリルにプリントする。
- 上下で折り畳み(※アクリルで囲い込んだ形にしたかったのと、細長い形にしてみたかった)
- キー数は14×4(※私の好みです)
PCB
既存のものには無さそうだったので作りました。
今にして思えば、アクリルプレートで空中配線も綺麗だったんじゃないかと思います。
row8、col7のマトリクスで、一応一体型のままでも使えるようにしてあります。
線材での配線を最小限にするため、9時の方向からぐるっと右回りに配線しました。
※はんだ付け関連については、ただひたすらやるのみ、かつ販売キットではない以上誰かの作業の参考となる可能性もほぼ無いので割愛します。
ケース
アクリルは加工業者にサイズ指定してカットいただいたものです。これをFab施設に持ち込んで、UVプリントします。
プリントするデータはIllustratorで作成します。
形状については、少し前に会社の機材庫のCNCを譲り受けたところだったので切削でやってみることにしました。
そこまで複雑な形状を作り込む必要も感じなかったので、パスを深さ指定して掘り込みます。
基板外形パスを7mm、基板形状からネジ用のブリッジ(?)を残したパスを7mm始点に1.2mm、インサートナット用の穴を7mm始点に3.5mm、といった具合です。
仕上がりはアクリル積層に近い形になりますね。
ちなみに、パワーに余裕を持たせた設定にしたところ、1mm掘るのに2時間半かかってしまい気が遠くなりました。。
こちらは切削中の粉雪のような切削くず降り積もる様子です。
本当はこうなる前にこまめに除去しないといけません。
やすりで磨いて、インサートナット、蝶番をセットしました。
プリント→切削の順で作業してしまったのですが、先に切削すべきでした。
切削の衝撃で浮いてしまわないよう、かなりしっかりと両面テープで固定するのですが、剥がすときにプリント面に傷をつけてしまいました。
スイッチ
アクリルの厚みをなるべく残しつつ、全体の厚みは抑えるために私の知るかぎり最も薄いスイッチ、Kailhの X Switchを使いました。
おそらく、業者ではない一般人はAliExpressのKailh Official Storeで買う以外にルートがないと思います。
Kaih Low profile Notebook X Switch
先日までキーキャップもここで買えたのですが、無くなっているようです?
復活か、新作の登場があるとよいのですが。
キーキャップ
ケース同様、Fab施設でUVプリントしました。
キーキャップをセットする治具はCNCで切削したのですが、ケースの項目でも書いたようにCNCもUVプリンタもIllustratorで作成したデータが使えます。
なので、同じファイル内にCNC用の治具レイヤーと、UVプリンタ用のプリントレイヤーを分けて作成しておくことで、ほぼズレなくプリントすることができます。
治具にブランクキーキャップをセットしたところです。この状態でプリンターにセットします。
ファーム
おなじみ、国内の自作キーボード界のグローバルスタンダードであるQMK Firmwareを使います。
今回は Keyboard Firmware Builderを使ってみました。
レイアウトを作成し、キーマップを設定し、hexを生成。
あとはQMK ToolboxでFlash。
無事文字が打てるようになりました!
ただ、日本語配列ユーザーには物足りない部分もちらほらあるのであとでコードで作り直そうと思います。
完成
こうなりました。13inchのMacBook Proと並べたときのサイズ感がちょうどよい。
切り欠きのサイズがギリギリすぎて、手持ちの中ではストレートケーブルしか刺さりませんでした。(このケーブルに合わせて切削しているので当然ではありますが)
ちょっと配置が険しいです。
2行目と3行目のピッチがだいぶ空いてしまうので打ちにくくないか心配していたのですが、まぁ使っていればそれなりには慣れるんじゃないかなという感触です。
「で(de)」「き(ki)」のようにポジションの近いキーを続けて打つと違和感がありますが「そ(so)」「け(ke)」など離れている場合はさほど気になりません。
反省
もし改良版を作るなら改善したい項目です。
- PCBの上下を繋ぐコードが無粋
- L字型のコネクタが刺さるようにする、もしくは無線化
- プリントする柄をもっと良い感じに
- ケースの角を落とす、上下の噛み合わせを作るなど、もう少し気の利いた作りにしたい
- ロープロ対応してみても良いかもしれない
この記事はMacBook ProのキーボードとFold(仮)で書きました。